”流れの落ち葉”16 余話6猫の恩返し

”流れの落ち葉”16 余話6猫の恩返し

 写真は池田駅前から、五月山へ向かう商店街の栄本町道りです。

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 その日の朝、僕鶏太は家から下の宮の在る室町五番町へと市内の高校へと

向かっていた。その頃、昭和35年は阪急の肝煎りで室町と言えばお屋敷町で

高い塀が並んでいた。 私の家、桃園から室町に向かう角塀の上に薄黒斑の

猫がチラチラ横目で伺いながら歩んでいた。

 

「おーおーいー、お前何所に行くねんー」
「えさでも、探しとるんかー」
「朝も早くからご苦労やなー」
「まあー気張りイナー」
「ニャゴー」

 

 と振り返りながら去ってたー。
それから、三日後”なあーなあーなんと”学校から帰ると母からえさを

貰って居るでは無いか。そして、私の顔を見るなりお帰りと言うように

鳴きおる。

 

「ニャゴー」
「おまえ、良くここが分かったなー」
「そやけど、厚かましいやないかー」
「わしの顔見ただけで、許しも無く先に餌食べてるやナンッテ。」
「まあーええーわー、餌を採り損ねタンヤナー」

 

 さあー、それからが大変最初は小さいバッター、コオロギ、そして、
ネズミ、果ては近所からくすねた魚の切り身。それをいつも餌をくれる

母の枕元へ並べるのであった。 猫の名前は親父の出向先の小倉では

ふぐのことを「フク」と読んでいたのでフクちゃんと名付けた。

 

「おいーフクちゃん、人様の者取るやんて余りやんかー」
「ちゃんと不自由無く餌貰って居るやろー」
「頼むから、泥棒猫には成らんといてヤー」
「ニャゴー」

 

 と分かったのか、それからは泥棒しなくなった。 それから何年か後、

年で体が弱ったフクちゃんは誰一人知れず去って行った。

 これが私の猫の恩返しである。

      

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