流れ落ち葉37余話10帰宅

流れ落ち葉37余話10帰宅

 写真は猪名川縁の阪神高速11号池田線です。

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 ”猪名の川瀬に水澄て---”と台湾へ出発時には感傷的であった私、藤木 鶏太は
無事帰れた喜びで、猪名川の川面を見る余裕もなく、弟の車で一路家路に。

 

「あんちゃん、無事帰れて良っかたナー」
「うん、一時は中国との関係で危なっかたナー」
「そらー、飲みに行った時のことカー」
「うん、寮で大人しくセナあかんっかてンー」
 そして、家に着き玄関の戸を開けるなり。

「おじちゃーんー、おーかえりーなアーサーイー」と飛び込んできたー。
「あんちゃん、ワイの初めての子や―」
「おーおー、可愛い坊主やンケー」
「兄さん、お帰りなさいー」
「あんちゃん、ワイの嫁ヤー」
「そうかー、初めまして今後よろしくネー、世話かけるかもネー」

 

 そう、私が台湾に行っている間に弟は結婚し、長男を儲けていたのです。
そして、親父も、おっかーも孫の顔を恍惚と見ていたのです。
よしゃー、ワイも頑張るデーと弟夫婦にも、色んな人からも紹介され見合いを
したのですが断られたり、台湾小姐の幻から冷めずに断ったりして居ました。
そのうち仕事の忙しさ紛れてしまいました。

 

「鶏太、何見てんの―」とお袋
「イヤー、なにちょっとネー」
「あんたー、この女優見てんのカー」
「いや、いやー、違うデー」
「阿呆か、あんたナー自分の顔と年考えヤー」
「そんなもん分かてるワー」
「しゃーけど、こんな人来たらエエのにナー」

 

 と、こんな会話に明け暮れる頃、万博が始まりましたが、忙しさと疲れで
一度も見に行かずで、弟夫婦がお袋を見物に連れて行きました。
口先たしゃで行動が伴わない一面が有り、其れを見合い相手に見抜かれて
いたのでしょう。 先ずは仕事一番です。         

次回へ。 Y.F